2021-11-06 13:23:53
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コメント(6)
今回はなろうさんにて投稿した「焚刑制御〜アストラルインフェルノ〜」のSSを書いてみたいと思います。
シェイリーンはアストラルの婚約者になります。後に王子妃になる女性ですね。
では。早速、いってみましょう!⬇
私はインフェルシア王国の第三王子で名をアストラル・インフェルシアという。
年齢は二十二歳だ。巷では「黒き影の王子」などと呼ばれている。くだらないと思って特に気にしてはいないが。
そんな私にも婚約者はいた。名をシェイリーン・エバンスといった。年齢は三歳下の十九歳だ。
シェイリーン――愛称をリーンという彼女は私が秘術を扱える事や暗殺を裏で請け負っている事を知る数少ない女性で。リーン本人も剣術や馬術が得意な勇猛果敢な性格をしている。見かけは銀の美しいまっすぐな髪に淡い神秘的な紫の瞳、背は高いが。あくまですらりとした彼女はそこらの猛者以上に強いのは意外としか言いようがない。
リーンは私をそれなりには慕ってくれてはいる。けど照れ屋ではずかしがり屋である彼女から未だに愛の言葉を言われた事はなかった。
「……アスト様。今日は昼からお茶会でしたね」
「……リーン。そうだね。もうそんな時間か」
「ええ。いつもお疲れ様です。書類の量が常に尋常ではないですしね」
リーンはそう言いながら苦笑いをした。私も最後の書類を片付けると眉間を揉んだ。執務机の備え付けの椅子から立ち上がる。背伸びをして両腕を回す。コキコキと音が鳴った。かなり肩が強張っていたので少しはほぐれて楽になる。
「では。庭園に行きましょうか」
「ああ。行こうか」
頷くとリーンは私より一歩下がった所で歩く。ドアを開けて先に出るように促した。リーンは小さく礼を言って廊下に出る。しばらくは無言でいたのだった。
私はリーンと違い、濃い茶色の髪を短く切り揃えている。瞳は薄い灰色で顔立ちが美形ではあるらしいが地味な外見をしていると自分では思う。リーンや両親、兄達は私も女性にそれなりには人気があると言ってくれるが。真偽の程はわからない。そんな事をつらつらと考えていたら庭園のガゼボに辿り着いていた。付いてきたメイド達が手際よくお茶やお菓子の準備をする。
「いかがしましたか。アスト様」
「いや。大した事ではないんだが。私はリーンに釣り合っていないと思ってな」
「そんな事。アスト様は素敵な方です。学問や武芸も優秀だし。真面目で努力家でもあります。わたくしはそんなあなたを好ましく思っていますのに!」
「……リーン。その。そう言ってくれるのは嬉しいんだが。ここは外だしな。誰に聞かれるかわかったもんじゃないから」
「……あ。ごめんなさい。わたくしとした事が」
リーンは顔をうっすらと赤らめた。その表情が珍しくてつい見つめてしまう。気がついたら近づいて彼女の頭を撫でていた。可愛いと思った。
「ア、アスト様?!」
「……ごめん。今はこのままで」
頭から手を離すと肩や背中に両腕を回した。そっと抱きしめてみる。温かな体温に柔らかな肢体。鼻腔をくすぐる甘い花のような香り。その全てに理性を試されている心地だ。
「殿下。シェイリーン様。お茶の支度ができました」
「……あ、ああ。ご苦労。退がってかまわない」
「かしこまりました。では失礼します」
メイド達は一礼すると静かに退出していく。私は抱きしめていたリーンを開放した。先ほどよりも顔や耳が赤いような。気にしないふりをしながらガゼボに行った。しばらくは静かにお茶を嗜んだ。
夕刻近くになりリーンは自邸に帰る事になった。私は名残惜しさにリーンを再び抱きしめて頬にキスをする。また、彼女は顔を赤くした。
「……アスト様。あの。そろそろ失礼します」
「ああ。気をつけてな」
「はい」
リーンを見送った。王宮の門にてだが。彼女が乗った馬車は少しずつ遠ざかっていく。私は藍色になった空を見上げた。星が輝いていて美しいなと思った。鼻の奥がつんとなるのをごまかしたのだった。
――完――
いかがだったでしょうか。お読みいただき、ありがとうございました(_ _)
おまけ⬇
ハロウィン絵。
ヴァンパイア姿のエリック(左側)、魔女姿のシェリア(右側)。
こんにちは。
はい。中身がなろうさんのSSとは違っています。
こちらはらぶらぶでほのぼのモードにしてみました。
どちらもお好きとの事。
そう言っていただけて嬉しいです。
最後におまけでシェリア達を描いてみました。
延長戦でハッピーハロウィン。
確かにそうですね〜。
労いの言葉もありがとうございます。